パブロ・ピカソの生涯 1881年10月25日、スペイン南部のマラガで生まれる。 美術教師の父のもとに絵を描き始め、11歳のときにラ・コルーニャの美術学校に入学。父もピカソの才能を認め、絵の道具を息子に譲り、自らが描くこともやめてしまう。 梟は雛のときには美しくて、長ずるにしたがってぶざまな鳥になるものだといわれる。そういえば、人間の芸風の成長においても、幼いときにあまり完全無欠なのは、成年になるにつれてかえって悪くなる前兆であるように思われる。舞や歌、その他さまざまのしぐさの万事にわたって、つねに心は繊細にはたらかせ、からだはおおらかに動かすようにすべきである。世の中のすべてのこと、あらゆる芸術をつうじて、それぞれに「秘事」というものがあるが、これは、公開してしまわないで、秘密にしておくこと自体に大きな意義があるためなのだ。下手な演者の中に良い面を見たとしても、自分より下手下手な演者のものだとして、問題にもしないような頑な心があったとしたら、そのかたよった心に自分自身が束縛されて、おそらくわが身の悪い面も知ることができないだろう。観客からの批評で、ときどき「なにもしないところが面白い」などといわれることがある。これこそ能の演者が深く秘する内心の工夫による効果である。修業の各段階ごとに、それぞれの時期の初心の芸を忘れてはならない。初心者から壮年の頃、さらに老年の時期にいたるまで、それぞれの段階にふさわしい表現を学ぶのはいずれも初経験であり、いわばそれぞれの時期における初心の芸にほかならない。そこで、もしその各時期の芸をやり捨てにして忘れるならば、演戯者はつねに自分の現在の芸風しか身につけていないことになるだろう。舞台上に立ってふるまうわずかな身のこなしにいたるまで、心に思う大きさよりは身体の動きを惜しみかげんに演戯すべきである。そうすれば、七分に動いた身体が演戯の基本的な構造をかたちづくり、十分に動いた心は演戯の情趣的な表現効果となって現れて、観客に面白い風情を伝えるであろう。上手は下手の手本であり、下手は上手の手本であるということを、よくよく考えあわせて研究すべきである。上手な演者が、下手の長所を取り入れて、自分の芸域を広げることは演戯者としてこの上なく正統な稽古の道すじである。修業を始めたころの初心の芸を忘れてはならない。とくに若いひとは自分の現在の芸境を十分に自覚して、これはまだ初心の段階にすぎない、ますます上位の芸境に到達するために現在の未熟さを忘れまい、と思って工夫をとらすべきである。現在の未熟さ（今の初心）を忘れれば、上達の程度や過程を自覚することもないわけで、したがって能は上達しないものである。自分の意識のおよばない部分に観客の眼から見た欠陥があることを、かたときも忘れずに用心すべきである。老後におよんだのちも、老境にはいったときの初心の芸を忘れてはならない。各時期それぞれの技芸をすべて身につけても、さらに老後の姿に似合う技芸を習おうとすれば、それは老境の初心の芸なのである。そうして、老境の芸を初心と覚悟していれば、それまで身につけてきた能がすべて現在の芸境のなかに凝縮して現われてくる。実名元清。中年以後の法名が世阿弥陀仏で、世阿・世阿弥はその略称。1363年頃、大和猿楽の役者観阿弥（観阿弥陀仏）の子として生れる。観阿弥は京都に進出して音曲の改革に取組み、京都の新熊野神社で催した猿楽が足利義満に評価され、庇護を受けるようになった。そのとき出演した十二歳の世阿弥も稀代の美童という評判を得て義満の寵愛を受けた。1384年に観阿弥が没して世阿弥は観世太夫(観世座の棟梁)を継ぐ。世阿弥は義満の庇護のもとで、「乞食の所行」とされていた猿楽を、芸術的に深化させていく。それまでの猿楽能は物まね主体であったが、世阿弥は歌舞中心の夢幻能を重視し、和歌・物語等の表現も取り入れて幽玄美を持つ演劇として完成させた。だが、1408年に義満が没すると、それまでのような恩恵は受けられなくなる。1422年、出家して観世大夫の座を長男の観世元雅に譲った。1428年に将軍になった足利義教は、世阿弥の弟四郎の子観世元重（音阿弥）を重用し、世阿弥父子を疎んずるようになる。1432年、元雅は伊勢で客死し、世阿弥も義教によって1434年に佐渡国に配流された。後に帰洛し、1443年に没したと伝えられている。仏法の箴言にも、「法を得ることはやさしいが、法を守ることは難しい」といわれている。法を守ることが難しいというのは、自分自身の考えに固執して迷うことがあるためである。烈しい役を演じる場合は、ただ興奮して力ばかり入れるのではなく、冷静さを保って心を柔らかに持つことを忘れてはならない。これは、いかに烈しく演じても、荒っぽい演戯にならない手段である。すでに自由自在の上手の芸位に到達した役者が、正統な手法である是風に非風を少しずつ交ぜて演じ、しかも破綻をきたさないことこそ、非を是に化かす、真の意味の「化かす」なのである。生涯この初心の芸を忘れずにすごせば、人生の退場の舞も上達一途のうちに舞うことができ、最後まで能には退歩ということがないはずである。秘密にしているから花なので、公然と現わしてしまったのでは、花ではありえない。観客席の人すべてが息をこらして、ああ止めるぞ止めるぞと、待ち構えている様子が見えたら、その緊迫した気持をわざと外らして、静かにそっと止めるのがよい。逆に、大かたの観客が面白いなあという程度の気持で、のんびりとしている様子が感じられたなら、しっかりと気を張って、鋭くきっぱりと止めるのがよい。これが観客の心を「化かす」こと、すなわち観客の予期するところを故意に外らす演出なのである。師匠というものは自分が現在演じているとおりには教えないものであって、かつて初心者であったときのように、弟子には身体も表現意図もせいいっぱいにはたらかせることを教えるのである。そうして十分な稽古が終わったうえで、弟子が次第に上達したところで芸にも余裕の生じる境地にいたり、そこで身体表現をできるだけ抑制するようにすれば、表現を意図の七分におさえる至芸はおのずから習得される。名人はすでに年来、身体も表現構造も十分にはたらかせる訓練ができていて、それを突き抜けて、身体を表現意図の七分におさえた余裕ある芸を見せるのである。しかるに初心者がこれだけの過程を経ずに、七分に現れた芸をそのまま模倣すれば、身体表現だけではなくて表現意図そのものが七分になってしまう。したがって、こういう初心者の芸には、それ以上の成長もありえないのである。舞を舞いやめた間隙、認を謡いやめた間隙、そのほか、せりふやしぐさなどいっさいの技芸の休止部に、つねに配慮を捨てず、緊張を持続する意識の奥底の充実がある。この意識の奥底にある充実感が、おのずと外ににじみ出て観客に面白いと思わせるのである。
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